はじめに
NISAは個人向けの非課税口座制度であり、投資を通じた資産形成を支援するためのものです。この制度では、株式や投資信託、ETF(上場投資信託)、公募株式投資信託などの投資商品を非課税で取引できます。近年、NISAにおいて債券投資への関心が高まっています。債券は比較的リスクが低く、安定的な利回りが期待できるためです。本記事では、NISAにおける債券投資の魅力や注意点、おすすめの債券ファンドなどについて解説していきます。
債券投資のメリット
債券投資には様々なメリットがあります。まずは、債券投資のメリットについて見ていきましょう。
安全性が高い
債券は株式に比べて価格変動が小さいため、安全性が高い投資対象と言えます。国債や優良企業の社債であれば、デフォルトリスクが低く、比較的安心して投資できます。リスク許容度が低い個人投資家にとって、債券は適した投資商品だと言えるでしょう。
また、債券は分散投資のために欠かせない資産クラスです。株式や不動産など他の資産と組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを抑えることができます。資産運用における債券の役割は非常に大きいと言えます。
利金収入を得られる
債券には利金(利息)が付されています。株式は配当を受け取れますが、債券なら確実に利金を受け取ることができます。この利金収入は、将来の備えや生活費としても活用できます。特に、定年退職後の投資家にとっては、利金収入は重要な収入源となり得ます。
利金収入の水準は債券の種類によって異なりますが、一般的に国債よりも社債、投資適格社債よりも高利回り社債(ハイイールド債)の方が高くなる傾向にあります。利回り水準が高ければ高いほど、利金収入も多くなります。
金利上昇に強い
金利が上昇する局面においても、債券は一定の強さを発揮します。確かに金利上昇は債券価格を下落させる要因となりますが、利金収入が増えるため、トータルリターンは維持されやすいのです。
特に、残存期間の短い債券ほど金利上昇の影響を受けづらくなります。したがって、金利上昇が見込まれる環境下では、短期債券への投資が有効な手段となり得ます。
NISAでの債券投資
NISAは非課税口座であるため、債券投資によるメリットはさらに大きくなります。NISAで債券投資を行う際の注意点やおすすめの債券ファンドについて見ていきましょう。
注意点
NISAで債券投資を行う際の注意点は主に以下の3点です。
- NISAで購入できる債券ファンドが限られている
- 外国債券への投資には為替リスクがある
- 債券ファンドの中にはリスクの高いものもある
NISAで購入できるのは、一般的な債券ファンドに限られています。そのため、直接債券に投資する場合と比べると、投資対象が限られてしまいます。また、外国債券への投資には為替リスクが伴います。為替ヘッジを行わない場合、為替の影響で損失が出る可能性があります。さらに、高利回り債券ファンドなどリスクの高いものもあり、慎重な選択が必要です。
おすすめの債券ファンド
NISAで投資できる債券ファンドの中からいくつかおすすめのファンドを紹介します。
ファンド名 | 概要 |
---|---|
eMAXIS Slim 先進国債券インデックス | 先進国の国債に投資するインデックスファンド。為替ヘッジあり。 |
iFree 新興国債券インデックス | 新興国の債券に投資するインデックスファンド。高利回りを狙える。 |
フィデリティ・US ハイ・イールド・ファンド | 米国のハイイールド債券に投資。高リスク高リターンが狙える。 |
eMAXIS Slim 先進国債券インデックスは、先進国の国債に分散投資できる保守的な債券ファンドです。為替ヘッジを行っているため、為替リスクを抑えられます。一方、iFree 新興国債券インデックスは新興国債券に投資するため、より高い利回りが期待できますが、リスクも高くなります。フィデリティ・US ハイ・イールド・ファンドはハイイールド債券に特化したファンドで、リスクは最も高いものの、リターンも大きくなる可能性があります。
投資目的やリスク許容度に応じて、これらのファンドから適切なものを選ぶと良いでしょう。分散投資の観点から、複数のファンドに分散して投資するのも良い方法です。
債券投資のデメリット
債券投資にはメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。主なデメリットについて説明します。
値上がり益は期待できない
債券は発行体から利金を受け取れますが、債券価格自体が上がることはあまり期待できません。株式であれば値上がり益を狙えますが、債券の場合は利金収入が主な収益源となります。そのため、大きな値上がり益を期待するのであれば、債券は不向きです。
ただし、インフレ率を上回る利回りの債券に投資すれば、実質的な値上がり益を得ることも可能です。インフレに強い債券への投資は有効な手段と言えるでしょう。
為替リスクがある
外国債券に投資する場合、為替リスクが発生します。為替ヘッジを行えば為替リスクは回避できますが、ヘッジコストがかかるためリターンが削がれてしまいます。一方、為替ヘッジをしない場合は、為替の影響を直接受けることになります。
為替リスクを抑えつつ、高い利回りを狙うには、部分的に為替ヘッジを行う手法があります。NISAで外国債券ファンドに投資する際は、為替ヘッジの有無を確認し、為替リスクへの対応を検討する必要があります。
デフォルトリスクがある
債券にはデフォルトリスク(債務不履行リスク)が存在します。国債であれば安全ですが、社債などの場合はデフォルトリスクに注意が必要です。特にハイイールド債券は、発行体の信用力が低いため、デフォルトリスクが高くなります。
デフォルトリスクを抑えるには、発行体の信用力の高い債券を選ぶことが重要です。また、債券ファンドであれば、分散投資によってデフォルトリスクを低減できます。リスク分散の観点から、個別銘柄ではなく債券ファンドに投資するのが無難でしょう。
債券投資の実践
債券投資を実践する際のポイントについて解説します。
投資目的とリスク許容度を意識する
債券投資を行う際は、自身の投資目的とリスク許容度を意識することが大切です。安全運転を望むのであれば、国債ファンドなどリスクの低いものを選びます。一方で、より高いリターンを求めるなら、ハイイールド債券ファンドなどリスクの高い商品を検討します。
また、老後の生活費を賄うためなのか、資産形成を目指すのかによっても、選ぶべき債券が変わってきます。投資目的に合わせて、適切な債券ファンドを選ぶことが重要です。
分散投資を心がける
債券投資においても、分散投資は非常に重要なポイントです。同じ種類の債券に集中投資すると、リスクが高くなってしまいます。
例えば、以下のように分散投資を行うことで、リスクを分散できます。
- 国内債券と外国債券
- 国債と社債
- 投資適格債とハイイールド債
- 残存期間の異なる債券
分散投資により、特定の債券の価格変動による影響を最小限に抑えられます。また、資産全体のリスク許容度に合わせて、債券投資の比率を調整することもできます。
リバランスを行う
債券投資においても、一定期間ごとにリバランスを行うことが重要です。リバランスとは、ポートフォリオの構成比率を元に戻すことです。
例えば、国内債券50%・外国債券50%のポートフォリオを組んでいたとします。しかし、運用実績の違いから、国内債券が60%、外国債券が40%になってしまったとします。このような場合、売買を行い、構成比率を50%ずつに戻します。これがリバランスです。
リバランスを行うことで、リスク許容度を維持でき、長期的に望ましい投資成果が得られる可能性が高まります。
まとめ
NISAで債券投資を行うメリットは大きいものの、リスクにも十分注意が必要です。債券投資を行う際は、投資目的やリスク許容度に合わせて、国内債券や先進国債券、新興国債券、ハイイールド債券などから適切な債券ファンドを選択することが肝心です。分散投資やリバランスを意識しながら、長期的な視点で資産形成を行っていくことが重要でしょう。
NISAは非課税制度のため、債券投資のメリットはさらに大きくなります。債券のリスクと向き合いつつ、その魅力を最大限に活かせるよう工夫していきましょう。