筋トレ知識

運動で活性化!脳と神経系に効果的なBDNFを高める方法

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はじめに

近年の研究により、運動が脳と神経系に与える様々なプラスの影響が明らかになっています。それらの中でも、BDNF(脳由来神経栄養因子)が特に注目されています。本記事では、運動によって脳内のBDNFが活性化し、認知機能の向上や神経変性疾患の抑制、神経障害からの回復など、脳・神経系への多様な効果について解説します。また、運動がどのようにしてBDNFを活性化させるのか、運動を続けることがどのような利点があるのか、そしてどの程度の運動が適切なのかなど、様々な観点から掘り下げていきます。

運動がBDNFを活性化するメカニズム

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運動が脳のBDNF発現を増強するメカニズムには、神経活動の増加や末梢組織からの因子や代謝産物の作用が関与しているとされています。それでは具体的にどのように運動がBDNFに働きかけるのか、以下のサブセクションで解説します。

神経活動の増加

運動を行うことで、脳の神経活動が増加します。その結果、脳内のBDNF発現が向上し、神経機能の維持や可塑性の誘導に働き、脳の健康を支えることがわかっています。

運動後、生体脳イメージング技術を用いて脳内のBDNF発現増強が確認されており、運動後1〜3時間で顕著な発光増加が観察されています。これらの研究結果から、運動が脳の健康に有益であることが明らかになっています。

末梢組織からの因子や代謝産物の作用

運動によって活性化される末梢組織からの因子や代謝産物も、BDNFの発現を増強するメカニズムに関与していると考えられています。運動することで、筋肉から分泌されるアイリシンというホルモンが血流に乗って脳に運ばれ、脳の栄養となるBDNFの分泌を促します。

BDNFは神経細胞の新生や成長、維持、再生を促し、シナプスの形成を促して記憶力や認知機能を向上させます。このことから、運動によって脳内のBDNFが活性化されることが脳の健康に良い影響を与えることが理解できます。

運動の効果:認知機能の向上や神経変性疾患の抑制

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運動がBDNFを活性化させることが分かりましたが、それによって具体的にどのような脳の効果が生じるのでしょうか。以下では、運動によってもたらされる認知機能の向上や神経変性疾患の抑制など、脳への様々な効果について解説します。

認知機能の向上

運動によって脳内のBDNFが活性化されることで、記憶力や認知機能が向上します。BDNFは神経細胞の成長やシナプスの形成を促し、学習能力や記憶力に関与する海馬や大脳皮質などの脳領域を強化します。

また、有酸素運動によって海馬の容積が2%増加することも報告されており、運動を続けることで認知機能の低下を防ぐことができます。

神経変性疾患の抑制

運動がBDNFの活性化を促すことで、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の発症や進行を遅らせる効果が期待できます。運動を続けることで、BDNFが神経細胞の保護や修復を助け、神経変性疾患に対する抵抗力を高めることができます。

また、運動はストレス軽減にも効果があり、過剰なストレスが神経細胞に悪影響を及ぼさないように保護する働きもあることから、運動を習慣化することが神経変性疾患の予防や進行抑制に役立ちます。

加齢や中枢神経疾患、障害からの機能回復に対する運動の効果

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運動は加齢や中枢神経疾患、障害からの機能回復にも効果的であることが報告されています。以下では、運動が加齢や神経疾患にどのように効果を及ぼすのかについて解説していきます。

加齢による認知機能低下の抑制

運動によってBDNFが活性化されることで、加齢による認知機能低下を抑制することができます。適度な運動を続けることで、脳内のBDNFを増加させ、海馬や大脳皮質などの脳領域を活性化させることができます。

例えば、週に3~4回、軽く汗をかく強度で40・50代は1回40分以上、60代以上は1回20分以上の有酸素運動を行うことが、加齢に伴う海馬の委縮を防ぐ効果が期待できます。

神経疾患や障害からの機能回復

運動は脳卒中や脳損傷からの機能回復にも重要であり、リハビリテーションにおいては運動療法が中心的な治療介入となることが知られています。脳のBDNF発現が機能回復に重要な役割を果たしていることが確認されており、脳卒中においては回路再編が機能回復を支えるメカニズムであることも明らかになっています。

ただし、どのような運動が脳に最適なのかはまだ完全には解明されていません。適切な運動の選択や個人の特性に合った運動プロトコルを選択することが重要で、今後の研究が求められています。

最適な運動プロトコルの選択

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運動の効果は個人の特性や運動の構成要素によって変動しやすいため、最適な運動プロトコルを選択することが重要です。以下では、最適な運動の選択について解説します。

高強度インターバルトレーニング(HIIT)

高負荷の運動を間欠的に行う高強度インターバルトレーニング(HIIT)がBDNFの発現増強に有効であるという報告もあります。HIITは短時間で効果的な運動ができ、一部の研究で認知機能の向上や神経保護効果が示唆されています。

ただし、高齢者や神経疾患の方には困難な場合も多いため、個人の状況や体力に合わせて選択することが大切です。

低負荷の運動

一方、強制的でストレスのかかりやすい運動はBDNF発現を抑制するストレスホルモンの産生を増やすため、低負荷の運動でしかBDNF発現増強は望めないとする研究結果も存在します。ウォーキングやライトエアロビクスなどの低負荷運動も適度に取り入れることで、ストレスなく効果的にBDNFを増やすことができます。

運動を続ける上で動機付けが重要であることを念頭に置き、無理のない範囲で運動を習慣化することが脳の健康にとって良いと言えます。

まとめ

本記事では、運動によって脳内のBDNFが活性化し、認知機能の向上や神経変性疾患の抑制、神経障害からの回復など、脳・神経系への多様な効果について解説しました。運動は神経活動の増加や末梢組織からの因子や代謝産物の作用によってBDNFを活性化させ、加齢や中枢神経疾患、障害からの機能回復にも効果を発揮します。

最適な運動プロトコルの選択が重要であり、運動による効果は個人の特性や運動の構成要素によって変動します。高強度インターバルトレーニング(HIIT)や低負荷の運動を適切に取り入れて、無理のない範囲で運動を習慣化することが、脳の健康に良い影響を与えます。本記事が、運動をする・継続するための動機となり、健康の一助となれば幸いです。


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